とても高価な宝物?カビの生えそうな骨董品?
土器や埴輪などの出土品?お寺や神社や古い町並み?
文化財にはそれらが生み出された地域・環境・歴史と、その中で人々が育んできた知恵・美意識などが、ぎゅっと詰まっています。地域や民族によってどんなに言葉や習慣が異なっていても、少しでも心豊かに暮らしたい、美しいものを創りたいという人間の欲求は、普遍です。わたしたちは「文化財」を通じて、人間の心に存在する「善」「美」への志向性を信じ、将来に伝えたいのです。
インターネットなどの普及により、世の中はとても便利になりました。しかし、グローバル化した文明社会の中での小さな文化は、変化を余儀なくされたり、消滅したりしています。この流れは、わたしたちを本当に幸せにしているのでしょうか?
中東の民族紛争に端を発したテロの脅威は、世界に拡散しつつあります。国内でも異なる文化に対する不寛容な空気が、少しずつ増幅しているように思えます。どうしたら人間は争わず、幸せに暮らせるのでしょうか?
文化的多様性を体現する「文化財」には、固定された価値観で行き詰った社会に活路を開くヒントが内包されています。願いをこめて創った作品には、生きる感動を与える力があります。混迷の度を深める社会の中で、異文化が生み出した美に尊敬の念を抱けるなら、それは、わたしたちの未来にとって一筋の希望ではないでしょうか?
国内に目を向ければ、地方の衰退や自然災害の発生などで、多くの文化財が消滅の危機に瀕しています。国宝や重要文化財など国が指定した文化財は、経済的に手厚く保護されていますが、それはほんの一部です。ひとつでも多くの文化財を残し、後世に受け継ぐためには、国や専門家だけではなく、わたしたちも力を出し合う必要があります。
文化財保存支援機構(JCP)は、専門家の会員に加え、市民の皆様のお力もお借りしながら、先人たちが培い護り伝えてきた文化の遺産を、その価値を損なうことなく次の世代に受け渡すべく、日々活動してまいります。
温かいご支援とご賛同のほど、よろしくお願い申し上げます。